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アイソメ図を作ろう3(After Effect編)

takahashi

前回から期間が空いてしまいましたが「アイソメ図を作ろう」第3回です。今回は趣向を変えてAfter Effectを使ってアイソメ図を描き、動かす方法を紹介します。

プロジェクトを作る

最初に新規プロジェクト、新規コンポジッションを用意します。

  1. ファイル > 新規 > 新規プロジェクト をクリック
  2. 新規コンポジッションを作成(上図)
  3. シーンの高さフレームレート背景色デュレーション(動画の長さ)などを設定してOKをクリック

カメラを遠くに置いてズームで撮る

After Effect にはカメラという概念は存在しますが、平行投影(Orthographic)に相当するレンズのオプションがありません。それでは、どうやって平行投影に近い表示を表現できるでしょうか。通常のカメラの場合、遠い位置から望遠レンズで撮影すると遠近感が弱まります。After Effectの場合も同様で、ズームの値を大きくし画角を0に近づけた状態で遠くから撮影しアイソメ図を実現します。

  1. レイヤーパネルで右クリック > 新規 > カメラを選択
  2. 種類1 ノードカメラを選択
  3. 単位pixelを選択
  4. ズーム5000を入力
  5. OKをクリック

レイヤーパネルで作成したカメラを見てみます(図右)。カメラオプション > ズームの値、トランスフォーム > 位置Zの絶対値(基準点からの距離)が入力値と同じになっているのが確認できます。ズーム ÷ 位置Zの絶対値 = 1、すなわち等倍で表示されていることを意味します。

ズーム値の5000という数値に理由はありませんが、大きすぎる数字を入れた場合は隣接する面の角の表示が崩れる現象が起こります。その場合はズーム値を見直してみるか、レイヤーの順序を入れ替えることで修正できます。

レイヤーの順序を入れ替える場合は手間に表示したい面をレイヤーリストで上位に移動します。ただし、アニメーションで前後の関係が入れ替わる場合は複製した面をレイヤーの前後に配置して表示・非表示を切り替えて崩れないようにするなどの調整が必要になります。

カメラの設置 : 固定タイプ

次にカメラの撮影位置・角度の設定です。今回、固定タイプのシンプルなものと水平パン可動タイプの2種類を解説します。まずはAfterEffectでアイソメ図を作成するチュートリアルでよく登場するカメラの角度は固定して使用するタイプから。

  1. 新規ヌルオブジェクトを追加
  2. ヌルオブジェクトの3Dレイヤーにチェックを入れる
  3. 親とリンクでカメラをヌルオブジェクトの子要素に設定
  4. ヌルオブジェクトのトランスフォームX回転-35.264°、Y回転45°、Z回転30°を設定

上から確認すると、最初にヌルオブジェクトを作成しています。ヌルオブジェクトは複数のオブジェクト(シェイプなど)をグループ化して操作するために利用します。作成したヌルオブジェクトを3Dレイヤーとして扱い、カメラを子要素に設定しています。これによりにヌルオブジェクトのトランスフォームを弄ることで、カメラの位置を画面中央を基点に変更できるようになります。

長〜い自撮り棒を持ち、先端にカメラを設置した状態ですね。

次にヌルオブジェクトのトランスフォームでY回転を45°で斜めの位置に、X回転35.264°でアイソメトリックの角度に設定します。そしてZ回転を30°に設定します。After Effectの3D回転処理はX → Y → Z の順で処理されるため、XとY回転を設定するとカメラが地面に対して斜め傾いた状態になってしまいます。それを補正するためにZ回転が必要になります。

垂直パンの上に水平パンがついた三脚を想像してみるとわかりやすいです。垂直角度(1)→ 水平角度(2)の順に変更するとカメラの水平が傾くので、最後にカメラの傾きを調整します(3)。

カメラの設置 : 水平パン可動タイプ

このまま使っても良いですが、折角なら画面中央を軸に360°回り込めるようにしたいですね。問題となるのは回転処理の順序です。なので、Y軸回転の後にX軸回転を処理するようにヌルオブジェクトを2つ入れ子にすることでこの問題を解決できます。水平パンの上に垂直パンが設置された一般的な三脚のイメージです。

  1. 新規ヌルオブジェクトを追加、3Dレイヤーにチェック、名前を水平パンにする
  2. 水平パンのトランスフォームを開きY回転を45°に設定
  3. カメラを水平パンの子要素に設定
  4. 新規ヌルオブジェクトを追加、3Dレイヤーにチェック、名前を垂直パンにする
  5. 垂直パンのトランスフォームを開きX回転-35.264°に設定
  6. 水平パンを垂直パンの子要素に設定

手順は若干複雑になりましたが水平パンのY回転を操作して画面中央の座標を基準に、ぐるっと1周回り込めるようになりました。

キューブを作る

カメラの準備はできたので、撮影対象のシンプルなキューブを作ってみます。

  1. 長方形ツールを選択して四角を描く
  2. 作成した四角(シェイプレイヤー)の3Dレイヤーの項目にチェックを入れる
  3. シェイププロパティサイズを100, 100に設定
  4. シェイプトランスフォームアンカーポイント位置を全て0に設定
  5. レイヤートランスフォームで下記を設定
    アンカーポイント : 0、0、50
    位置 : 960、540、0(画面の中央座標)
    方向 : 0、0、0

手前右の面ができました。続いて手前左面、上面を作成します。

  1. 作成したシェイプレイヤーを複製
  2. 作成したシェイプレイヤーを選択、レイヤートランスフォームで下記を設定
    アンカーポイント : 0、0、50
    位置 : 960、540、0(画面の中央座標)
    方向 : 0、90、0
  3. 再度作成したシェイプレイヤーを複製
  4. 作成したシェイプレイヤーを選択、レイヤートランスフォームで下記を設定
    アンカーポイント : 0、0、50
    位置 : 960、540、0(画面の中央座標)
    方向 : -90(270)、0、0

キューブの手前3面ができました。同じ要領で裏側も作成しましょう。

作成した3面を複製し全てのアンカーポイントのZ座標(50)を-50に設定します。これでアンカーポイント0, 0, 0を中心とした1辺が100の立方体ができました。

最後に3Dレイヤーのヌルオブジェクトをキューブの名前で作成し、6面の親に設定します。

アニメーションさせる

続いてアニメーションの設定です。最初にカメラにキューブの周囲を一周する動きを設定してみます。

  1. シーンから水平パン > トランスフォームを開く
  2. 現在の時間を0;00;00;00に移動
  3. Y回転のストップウォッチアイコンをクリック
  4. 現在の時間を終点に移動
  5. キーフレームを追加をクリック
  6. Y回転で1x+45.0°(360+45°)に指定

スペースキーを押すと上のようなアニメーションが表示されると思います。
続けてキューブを回転させてみます。手順はカメラと同じです。

  1. シーンからキューブ > トランスフォームを開く
  2. 現在の時間を0;00;00;00に移動
  3. Z回転のストップウォッチアイコンをクリック
  4. 現在の時間をタイムラインの中央に移動
  5. キーフレームを追加をクリック
  6. 現在の時間を終点に移動
  7. Y回転で1x+0.00°に指定

アニメーションの途中(180度回転した辺り)でキューブが転がる動きが追加されました。

まとめ

以上、After Effectでアイソメ図を作成してアニメーションさせるまでの基本的な手順でした。今回解説したキューブは立方体の中心にアンカーポイントが持ったシンプルなものですが、親子構造とアンカーポイントの設定を工夫することで、より複雑な動きができるようになります。

最後に記事サムネイルのダンボールの組み立てアニメーションの作り方を少しだけ紹介します。当初はこのダンボールを記事のメインにするつもりでしたが、操作工程が長くなってしまったので、ざっくりとした説明になります。

上はダンボールの片側の動きをステップで図解したものです。親子構造は茶色→黄緑色→青色の順に指定。茶色の面は中央にアンカーポイント(丸十字)があり、黄緑色と青色の面は親要素と接している辺にアンカーポイント(半円)があります。この状態でそれぞれのトランスフォーム > 回転のみを操作して、ダンボールが組み立てられる動きを再現しました。

これを複製し180°回転したものを後側に配置、グループ化して完成といきたいところですが…実際に作ってみると上下関係が逆転する面があり、その部分は複製配置したレイヤーの表示・非表示を切り替える方法で調整を入れています。

ところで、みなさんは工場動画はお好きですか?自分は結構好きでちょくちょく見たりします。サムネイル用の見た目を整える目的で工場っぽい背景を追加したのですが、作り始めたら…

・ダンボールを折る作業は型押しかロボットアームか
・底面にガムテープを貼る仕組みはどうするか
・組み立て効率は…

と気になり妄想が止まらなくなりました。これは沼るやつだと思い、途中できりあげて魔法で動くファンタジーなアナゴ出荷工場の風景に落ち着きましたが(落ち着かない…)。参考に「工場箱詰め」で動画検索した所、ダンボールの組み立て機構も設置面積や詰める対象に合わせて色々な種類があり興味深かったです。

それでは、また次回お会いしましょう。